花の歴史


意外と知らない外来種の花 / 花と日本の歴史

花と人々の関係の変化

日本では古来よりお墓に花を供えたり、花を愛でる習慣がありました。
しかし、現在のように平民が花を贈りあう行為が根付くのはかなりの時間が掛かったようです。
その原因として、天皇が公卿達に花を下賜する際、天皇陛下自らが公卿の冠に花を挿し与えたと云われ、一般の人々には「花」は恐れ多い物と考えられるようになったそうです。

「源氏物語」によると男女が愛の告白を行う際に花を贈るなどの習慣があるようですので、平安時代ごろに一般の人々も花と接するようになったと思われます。

生け花を追求した「華道」は室町時代に広まりました。

在来種の花の一覧

サクラには穀物の神様が宿ると云われ、古来より農業開始の指標とされるなど、農業に大切なものでした。
「万葉集」にもその名が登場し、平安時代には「花」と言えば桜を指すほど人気がありました。
現在最も有名な「ソメイヨシノ」が広まりだしたのは江戸末期であり、明治以降に多く植えられました。


躑躅・皐月

「万葉集」でも詠まれるなど、とても長い栽培の歴史があります。江戸時代に栽培が大流行し、多くの園芸品種が生まれました。
最も樹齢のある古木は千年にも及ぶほどと言われます。


日本最古の歴史書「古事記(712年)」にもその名が登場します。
男の神さが藤の花を女神さまに贈り、その花の美しさによって恋愛が成就したと云われ、かなり古くから親しまれてたようです。清少納言の「枕草子(996年)」や紫式部の「源氏物語」にもフジが出てくるようです。
室町将軍・足利義詮や太閤・豊臣秀吉も観藤会を催したことが知られ、江戸時代までは藤から取った繊維を使った「藤衣」と呼ばれる仕事着が作られていました。
日本で植物分類学が確立する前は、野田藤(ノダフジ)と呼ばれていました。


薔薇

その容姿から外来種と思われがちですが、ノイバラ、テリハノイバラ、ハマナシなどの立派な日本固有種があります。
「万葉集」や「源氏物語」、「古今和歌集」にもバラの名前が出てきています。
現代のように「花の女王」として親しまれるのは明治時代になってからでした。


蓮(ハス)

2000年以上も昔にインドより日本に渡って来たと云われており「古事記」、「万葉集」にも名前が出てきます。
昔はハスの事をレンコンと呼ばれていたようで、栽培こそされていなかったようですが、食用にはされていました。


睡蓮(スイレン)

ヒツジグサ(未草)の1種類のみ自生。


花菖蒲

花菖蒲の原種である「ノハナショウブ」の花は春後半の梅雨前に咲くため、古来より稲作の水を待つ人たちは、この花で梅雨の時期を把握していました。田植えの指標とも言えます。
栽培は平安時代頃から行われており、特に江戸時代に江戸系、肥後系、伊勢系、長井古種など多くの園芸品種が生まれました。


紫陽花

紫陽花は日本原産の植物で「万葉集(759年)」などにも名前が出てきています。現在、アジサイと呼ばれる植物は江戸時代にシーボルトが日本よりもって帰ったアジサイが逆輸入された「西洋アジサイ」がほどんどです。日本固有のアジサイはガクアジサイと呼ばれます。


百合

国内には15種類の固有種が自生しており、「古事記」にも『神武天皇が百合の花を摘んでいる娘に惚れて嫁にした』という記述があります。(このユリはササユリと思われます)
花を観賞目的に栽培れるようになったのは 江戸時代で、元々は食用や薬用としての利用が主でした。
明治になるとヤマユリやカノコユリが外国へ輸出され、海外で人気となっていきました。


「秋の七草」の一つで古くから親しまれてきました。「万葉集」で最もよく読まれる花です。


山茶花

山茶花は日本が原産の植物です。「冬の華」として各地に伝播し、幾度か盛衰を繰り返しながら今日に受けつがれています。
今日おいて山茶花と言えば赤い花を指しますが、山茶花の原産種は白い花です。
山茶花の原種(外部WEBサイト)


椿

日本原産の花で「古事記」や「日本書記」、「出雲風土記(733年)」などの多くの古文献に名前が出てきます。山茶花によく似た赤い花を冬から春に掛けて咲かせます。
花弁が散らず、花が丸ごとボトッと落ち、その姿が人の生首を連想させる事から、見舞いの贈り物にはタブーとされます。
色々不吉な伝承も多く、新潟では荒れ寺に椿が化けて出たり、島根県では妖怪、牛鬼の正体が椿の古い根であったりなどの伝説があります。
しかし椿は観賞以外に用途が多かったようで、葉のエキスが止血薬となり、古来より朝廷では毒消しの悪魔祓いとしてお祭りに使われてたり、また種子からとられる油分が食用や燃料など、さらに材木や木炭など実に多くの事に用いられていました。


かつては「尾花」と呼ばれ「万葉集」でもその名が詠まれています。茅葺屋根の材料や家畜の餌として古くから利用されてきました。
「秋の七草」の一つ。


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